皆さんはカスタムインナーイヤーモニター(以下、CIEMと略します)をご存じでしょうか?
このブログを読んでいる人でアイマスのライブに行く人なら「ライブ中に演者さんが耳にはめているアレ」といえば伝わるかもしれません。
自分の耳から耳型をとり、自分の耳にピッタリとはまる形のイヤホンのようなものだと思えば大体あってます。
元々はアーティストやバンドなどステージに立つ人のために作られたオーダーメイドのイヤホンとして始まりました。
その目的はおおまかに「自分たちの演奏の返りや観客の声でリズムが乱さされるのを防ぐ」「長時間大音量にさらされるステージ上の人の聴覚を保護する」でした。
そんな役割を持って生まれたCIEMですが、今現在ではステージに立つことのない一般ユーザーにもイヤホンの代わりとして使っている人がいるのを見かけるようになりました。
かくいう私もその1人です。CIEMを使い始めてから、イヤホンにはもう戻れないと感じてます。
なので今回CIEMについて、メリット・デメリットを書いてみようかと思います。
(以下の内容は大学の専攻で聴覚を扱っていたので他の人よりは多少詳しいですがあくまでも素人なので全部うのみにしないでリンク先のサイトも参照してください。)
まず最初に最大のデメリットですが、CIEMは値段が高いです。耳型をとって生産するオーダーメイド品なのでとても量産型のイヤホンとは値段では勝負できません。
今現在、特殊な状況を除けば、手に入れるのに最も安くても5万程度必要です。
値段だけ見てページを閉じるのもありだと思います。(イヤホンが数千円で買えるのに高すぎる、ごもっともな意見です。)
しかし、以下の項目のいずれかに当てはまる人はCIEMを導入はしなくてもいいと思いますが、記事の太字のところだけでも読んでいくのをお勧めします。
・耳の穴が小さくて既存のイヤホンだとすぐに耳から外れてしまったり、逆に耳が痛くなったりする
・イヤホンやヘッドホンを使用して長時間音楽を聴く
・イヤホンやヘッドホンを使用して大音量で音楽を聴くのが好き
・仕事で聴覚を使用する(ステージに立つことも含む)
・健康は金で買えないのでできることなら聴覚を長持ちさせたい
私の思いつく限りではこんなもんですが、詳しい人で補足があればコメントでお願いします。
それではようやく本題です。
最初にCIEMについて簡単に解説するのですでに知ってるよ!っていう方は下の赤字の【メリット】まで飛ばしてください。
CIEMは普通のイヤホンとは何が違うのか。
まずは構造が異なります。
最近はイヤホンのタイプも沢山ありますが主流はカナル型といってシリコンやスポンジのイヤーピースを耳の穴に押し込むタイプだと思います。なので基本的には耳をふさぐのはイヤーピースの部分がメイン。
それに対してCIEMはイヤホン全体で耳の穴をふさぎます。以下の画像は私のCIEMの右耳用で、通常のイヤホンのイヤーピースにあたる部分は左側に向けてにょきっと出てる部分が該当します。飛び出ている部分もですがその根元の部分も私の耳の方から作られているのでほぼ専用の耳栓みたいになります。実際にCIEMを装着して音を鳴らさなくても外の音は9割くらいカットされた状態です。
そして作り方も異なります。一般のイヤホンは人間の耳の平均的な形に合わせた大きさで装着感がよくなるようにデザインされていますが、CIEMは一人一人の耳型を採取してからその型を基に作成を行います。
そのため、作成にはまずは両耳の耳型採取が必要となります。どんな感じなのか言葉で伝えるのは難しいのですが2014年に私が耳型採取した時のメモが残っていたので気になる方はご覧になってみてください。
⚡️ "カスタムIEMの耳型採取&作成"
4年前にFitearのイヤモニを作った時のまとめ(ブログ用)https://t.co/tjIFYBYCQ0— ガースー (@gasu_y) July 27, 2018
このように普通のイヤホンと違うCIEMには様々なメリットがあります。(当然デメリットもあります。)
【メリット】
①個人の耳型を基に作成しているので意図していないタイミングで外れづらい。(外すのは簡単です。)
②CIEM自体が耳栓みたいなものなので非常に遮音性が高い。
③遮音性が高いので音楽を聴くのに必要なボリュームが結果として低くなり、耳に優しい。
【デメリット】
①オーダーメイド品なので価格が高く、作成にある程度の納期が必要となる。
②オーダーメイド品なのでリセールしづらい。
③試聴機と実際のCIEMで音の感触が変わることがある。
④そもそも視聴できる機会が少ない。
さて、ここからはCIEMのいいところと悪いところについてそれぞれもう少し詳しく説明します。
先にメリットから。
私にとって最大のメリットは①の外れづらいことです。もともと耳の大きさは個人差が大きいのですが、私は右の耳の穴が日本人の平均よりも小さいです。なので既製品のイヤーピースではちょっとコードが引っ掛かると耳からポロっと抜けます。かといって大き目のイヤーピースを付けると圧迫感で耳が痛くなります。コンプライと呼ばれるタイプも試しましたが私には合いませんでした。
その点CIEMは耳穴のねじれ構造を利用して耳に装着します。普通に押し込むのではなく少し回しながら装着するのです。そのため引っ張りの力に強く、ちょっとしたことでは外れません。また圧迫感も少なくなります。(思いっきり引っ張れば抜けます、がイヤホンよりもはるかに強い力が必要です。)
そして②に関しては耳栓をしてその上でイヤホンをしているような構造なので電車の中などでもエアコンのついた自分の部屋くらいの感覚で静かです。(この辺はメーカーによって多少の差が出るところですが、基本的にはイヤホンとは格段の違いがあります。)
私の体感ですが、使用しているFitearのMH334では電車内で隣のおばちゃんたちが何の会話してるのかはわからないし特に気にならないです。
また、②と関係するのが③です。近年、WalkmanやiPodの普及とともにイヤホンやヘッドホンでの長時間の大音量への暴露が耳に悪い影響をもたらすという報告が増えています。おそらくは以前よりも耳に対する負荷が増えているからだと考えられており、最近ではセーフリスニングという概念も登場しています。(詳しくはこちらのページを参照してください。)
先ほどイヤホンやヘッドホンを長時間もしくは大音量で使用する人にCIEMをすすめるといったのはこういったことにも効果があるからです。
ここから先は実際の単位を使うと小難しい話になるのでイメージで話します。なので細かくは間違ってることもあるのですが伝えることを優先してますのでご了承ください。
例えば普段、静かな自分の部屋で20のボリュームで音楽を聴く習慣があるとしましょう。
外出先の雑踏や電車の騒音など周辺環境が騒がしく周りの雑音がボリュームで言うと10相当だとします。
その状態でいつもと同じように音を聞こうと思うと、イヤホンをしただけでは周りの騒音は消えず残るのですがそれを8くらいだとすると、8の騒音をかき消してさらに20のボリュームで聴くので単純に足して28ということにはならず、実質的にはいつも家で聴いている以上の30以上のボリュームが必要になります。
その一方CIEMは②でも触れたとおりほぼ耳栓なので遮音性が優れているので騒音は1~2くらいのイメージです。なので騒音をかき消すのに必要なボリュームも減るのでボリュームで言えば25もあれば十分な音量が取れます。
※これはあくまでもイメージです。
そして残念ながらいまだにどれくらいの音量で何時間聞いたら将来耳に悪影響を及ぼすということはわかっていません。(アメリカの学会が発表している基準等もありますが、かなり厳しめで現実に即したガイドラインというよりは参考基準みたいな感じです。)
なので私たちにできることは少しでも耳にかかる負担を減らしてあげる、これにつきます。
CIEMを使っていたところで大音量で長時間音楽を聴いていたら(イヤホンよりは負担は軽いかもしれませんが…)耳に悪影響を及ぼす可能性は非常に高くなります。
現時点では耳の聴覚センサーといわれる内耳の機能を復活させる方法はなく、近い将来にiPS細胞などでその技術が出てきたとしてもCIEMよりも高価な技術になるのは想像に難くありません。自分の耳は自分で守るしかないのです。
ちょっと小難しい話になってしまいましたがここからはCIEMのデメリットです。
①一番わかりやすいのは値段が高いこと。オーダーメイドなので作るのに時間も手間もかかるので高いです。
一般的に耳型採取で5千円。作成にはそれに加えて安い機種で5万程度、高いものでは30万以上します。
価格と品質のバランスがよく、CIEMの人気の価格帯はおそらく10-20万のゾーンです。最安値付近の機種は10万付近の機種と比較すると音質などで物足りないことが多いのではないかと思います。
②専用品なので一般的なイヤホンと異なり、中古市場というものがほとんど存在しません。
イヤホンは買って音が気に入らなければ売ることができますし、逆に新品にこだわらない人であれば中古品を安く手に入れることもできます。CIEMではそれは難しいです。一度作ったものを手放すときの価値の下落はイヤホンよりも大きくなります。
③CIEMに試聴機というと少し意外かもしれませんが存在します。ちょっと大きなイヤホンみたいな外側に通常のイヤホンと同じシリコン製のイヤーピースがついているタイプが多いです。当然試聴機なので個人の耳にぴったりフィットすることはないのでできるだけ実際の機種に近づくように、音楽をならさずに両手で試聴機を支えて静かな状態を作ってから視聴するとよいとされています。
作った私の感想としてはそれでも試聴機よりも実際のCIEMの方が遮音性も高いし、外に音が漏れない分低音が強くなる傾向があると感じました。
④量産品ではない(=数が出ない)ので試聴の機会が限られています。
都心部だとe☆イヤホンさんにカスタムIEM専門店が存在しますのでそちらに行くのがいいでしょう。
Fitearと決めているのであれば須山補聴器の銀座店での試聴もお勧めです。予約制なのでしっかり試聴の時間が取れるのと周りが静かで環境的にもよいです。
あとは年に数回行われているオーディオフェスも沢山の企業が出展しており、上記店舗でも試聴できないようなメーカーさんなども視聴できることがあるのでお勧めです。国内で行われるものとしては大きく分けて2種類、フジヤエービックさん主催のヘッドホン祭の系列とe☆イヤホンさん主催のポタフェスの系列が有名です。
イベント当日は耳型採取無料キャンペーンや、フェス限定特価などで購入できることもあるのでCIEMに興味がある方は覗いてみるのもいいかもしれません。
さて、大変長くなってしまいましたが私はCIEMからイヤホンに戻ることは多分もうないと思います。
イヤホンの延長線上のように見えますが使ってみると全くの別物です。
確かに値段的には高いのですが2014年につくったCIEMはまだ現役です。
元々ステージ上で使用することも想定されているCIEMは普通のイヤホンよりも劣悪な環境に強いとされており、メーカーにもよりますが長年使用できることも多いです。(CIEMの多くはケーブルは脱着式なので断線しても買い替えできますが余りやすくありません…なので丁寧に扱うに越したことはないです。)
ハードルが高いのも事実なので私の知識の中でいろいろと書いてみました。
興味のある方の参考になったのだとすれば幸いです。
最後に765プロダクション・ミリオンスターズのメンバーでFitearのクライアントリストに乗っている方を抜粋しておきます。
(何の機種を使用しているのかは公表されてません。また一部ではリストに掲載されていてもライブ映像などを確認すると他者のCIEMを使っているように見える方もいらっしゃるのであくまでも参考までにお願いします。)
愛美/浅倉杏美/麻倉もも/阿部里果/雨宮天/伊藤美来/稲川英里/今井麻美/上田麗奈/大関英里/小笠原早紀
角元明日香/郁原ゆう/木戸衣吹/桐谷蝶々/釘宮理恵/香里有佐/駒形友梨/近藤唯
斉藤佑圭/下田麻美/末柄里恵/諏訪彩花
高橋未奈美/種田梨沙/田村奈央/戸田めぐみ
中村温姫/中村繪里子/夏川椎菜/仁後真耶子/沼倉愛美/野村香菜子
長谷川明子/浜崎奈々/原嶋あかり/原由実/平田宏美/平山笑美/藤井ゆきよ
Machico/南早紀/村川梨衣
山口立花子/山﨑はるか
若林直美/渡部恵子/渡部優衣
リストに名前が載っていないのはライブ出演者では以下の通り
たかはし智秋(三浦あずさ役)/滝田樹里(音無小鳥役)
小岩井ことり(天空橋朋花役)/田所あずさ(最上静香役)
コメント