東京医科大学の女子受験者減点問題について

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ミリオンライブに無関係な話です。

私のTwitterでもたびたび触れているが私自身、医療関係者であり、友人には医師もいる。
いろいろな話を伝え聞いているだけなので憶測に基づく面もある。正しくないこともあるかもしれないが私なりの知識で書いてみました。

今回の東京医科大学で問題になっているのは「女性が入学試験で一括で減点をされ、女性入学者が減るように調整された」という点である。
これを行ったことについて東京医科大学は要約すると、大学に入学したものの多くが東京医科大学や関連施設で働くため、将来的に結婚や出産で離職率が高い女性よりも男性を多く合格させたかったからとしている。

この問題の是非については問うつもりはない。
事前に告知していればセーフだったのかは私にはわからないが女性であるというだけで機会が奪われたのであり「女性差別」なのは間違いない
では、なぜこのような差別的ふるまいが行われたのか、その背景と解決策について考えたいと思う。

まずは女性の離職率が高い(&復職率が低い)と言われている現状について。
これは事実である。女性医師の離職として女性特異的なものを上げるとすればやはり結婚と出産である。
女性医師の結婚相手は男性医師であることが少なくない。ご存じの方もいるかもしれないが、医師の仕事は激務であり、なかなか職場以外での出会いが少ないため、一番身近にいる男性医師との結婚の割合が多いのは納得できる。(職場に他にいる代表例は看護師だが、圧倒的に女性なのは周知の事実である。)
また、世の中の男性は相手の学歴や年収はキニシナイという体裁をとっているが、現実には自分よりも稼ぐ女性と付き合うことを受け入れられない男性も多い。そういった点で女医さんからすると選択肢がそこまで多くないといった側面もあるのかもしれない。
そんな状況で男性医師・もしくはそれと同等に稼ぐ人と結婚する女医が世の中にはたくさんいる。
彼女らにとって結婚し、子供を作って育てる。その後職場に復帰する意味がどれほどあるのだろうか。
家事・育児は大変な重労働である。金銭的な不安があるのであれば、その片手間に仕事に復帰する必要もあるだろう。
しかし多くの既婚の女医にとって金銭面での不安はそこまで大きくないのである。であれば、復帰しない女医が少なくないというのも少しは理解できるのではないか。

さて、この前提を踏まえたうえで、今回の問題に対してどのような解決策があるのかを考えていく。
大学側の言い分としては女医の離職や育児に伴う稼働時間の短さが問題のようである。
つまりそれがなくなれば男女で点数に差をつけることは必要ないということになる。
医療の現場だけでなく保育士など女性の多い職場では問題になっているようであるが、妊娠は突然やってくる。(ある程度計画性を持っていても妊娠するかしないかはその時にならないとわからない。)
そのため、ただでさえ人手が十分とは言い難い医療現場で突然、妊娠・出産のために女医さんが仕事を休むと代わりにその業務をこなすのは男性医師や未婚の女医である。さらに育休や育児中の時短勤務も考えると当然夜間の当直や緊急呼び出しなどにも対応できないため、それらの負担は残されたものにのしかかるのである。

これを解決する方法としては大きく分けて2つ。
(a)医師をもっと大幅に増やせばいい
(b)医師の仕事を減らせばいい

まず(a)について、医師の増員の案。これについては現在も医学部の定員は増加傾向でありすでに少しずつであるがなされている。しかし高齢化で患者が増える一途であるのに対応しきれていない現状があり、上記の問題を解決するレベルとは到底言い難い。
医学部の定員が少ない理由の一端に医師育成には莫大な金額がかかるということがある。今回の東京医科大学の問題でも「助成金」というワードが出てきたが、6年間で数千万、とただでさえ高いといわれている私立医学部でもその学費に加えて多額の国からの補助金が使用されている。
医師の増員を早急に目指すのであればめちゃくちゃ金持ちの家の子供しか入れない補助金なしの大学を作るか、みんなが支払っている税金をさらに増やす必要がある。医師の定員を増加すると当然いままで医師になれなかったものがなるので質の低下の問題はあるだろう。しかしそこれは机上で語れるものではないので一旦無視をしよう。
前者の金持ちの子息からなる大学の医者にどれだけの人がかかりたいかは謎であるが、新たな獣医学部を設置するのにもこれだけ厳しいご時世に「金持ちの子供しか入れない医学部」なんて字面だけ見ても実現が難しいのがわかるだろう。
そして後者は実現可能ではあるが、実際にこの問題を解決するために税金が上がってもいいですか?ときいたら「女性受験者だけ点数が下がるのは差別だ」と声高に主張した人も渋い顔をするのではないか。おそらく国民全員で分担しても些細な増額で済むとは考えづらい。それでもかまわないという広い同意が得られれば一気に解決するが私にはそうは思えない。

次に(b)について、医師の仕事を減らす案。これはやることはとてもわかりやすい。夜間の当直や緊急呼び出しを減らす・もしくはなくせばいいのである。例えば夜間も救急受け入れしている病院が3つある地域では3交代制にすれば当直の機会は1/3になるかもしれない。しかしそれにより不利益を被るのは患者、つまり私たちである。夜中におなかが痛くなっても今までは車で30分のところにあった病院にかかればよかったのが1時間以上かかるようにになる、そして1病院当たりの患者の数も増えるので待ち時間も3倍とは言わないが確実に長くなる。
現代、特に都市部に生きていると当たり前のように夜でも病院はやっているものと考えているが、それは当たり前のことではなく、誰かが支えて成り立っているものであり、その支えての負荷を減らそうと思うと、利益を享受している側にもそれ相応の覚悟が必要なのである。
おそらくこういった話だけではなく、さらには通常の業務に関してもただでさえ短い病院の午前・午後の受付時間の短縮や、1分1秒でもすぎたら門前払いといったことも今以上に採用されてくる可能性がある。当事者でないから好き勝手に批判していたつもりが、実際に自分が関係してくると論調がころっと変わることはよくある。そうならない自信のあるものがどれだけいるのか、なかなか普段受けているサービス(特に命にかかわってくる可能性があること)が悪くなるのに耐えられる人間は多くない

さて、まずは現実に女医さんが増えたことに対する不利益を減らす方向で考えてみたが、個人的には難しそうだという結論にいたった。
それでは不利益を減らすのではなくて、不利益を作る原因をなくす方向で考えてはどうなのだろうか。
つまり(C)女医さんが結婚・出産してもバリバリ働けるようにするシステムや周囲のサポート体制の構築である。
これが簡単にできるのであれば他の女性が多い職場でも困ってないんだよ!って声が聞こえてきそうであるが、他の職業と異なるのは女医さんは他の職業と比べて収入が多いため取れる選択肢が多いのである。
前述のとおり、夜間の当直もこなし緊急業務も行うので子育てや育児を片手間にこなすことはできない。両親が近くに住んでいれば多少の力添えにはなるかもしれないが、それは人によって条件が違いすぎて、すべての女医さんの解決策にはなりえない。
女医さんが誰でも使えるのはそう、パートナーである夫だけであるのだ。つまり女医さんが家計を支えてその夫が主夫として働く。それがおそらく現段階での現実的な答えなのではなかろうか。
しかし前述したとおり、職場外での出会いの場も少なく、出会えたとしても相手が主夫を引き受ける可能性はさらに少ない。
そして運よく相手が主夫をしてくれたとしても今の日本では家で家事と育児に専念する男性への風当たりは強い。
口では養われたい…という男性は多いが、そんな状況で女医さんと結婚して主夫をする男性に私は心当たりはないし、知り合いにもいない。

私の無い頭で考えたことであるので、これ以外にも施策はあると思うが、即効性があり現実性があるものとなるとかなり限られてくる、あるいは代償が大きいものになるのではないだろうか。
おそらく東京医科大学で発覚しただけで、他にも同様の措置をとった医学部がないとは私には思えない。
なぜならどの大学も入学者をある程度卒業後に自分の大学で働いてくれる労働力とみなしているからである。
その考えで行くと簡単に解決するのは東京医科大学がやったように男性の合格者が増えるようにする、になるのではなかろうか。

ちなみに上記の問題を解決しないまま女性医師の数が増えていくと、男性医師や未婚の女医の負担が増える。
日本の医師制度では大学時の成績など関係なく好きな科を選べるので女性医師が多い科は激務のリスクが高いとして敬遠され新規の医師が減る→さらに残されたものの仕事が多くなり、激務を続けた末に待っているのは、患者は溢れて医師はいない、という医療崩壊である。現にこの問題に一番近い産婦人科医では、それに近い状態になっているところもあるといううわさも聞く。
「女性差別」であるのは間違いないのであるがその裏で仕事が忙しくて家族と過ごす時間は持てないといった「男性差別」、そして彼女の産休・育休を守るために婚活が犠牲になるなどの「未婚女性差別」となっている側面があるというのを現場に近いものとして記させていただいた。

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